前回のエントリの続きで、研究者はカネを得るのに何が必要か、整理する。
1.コンスタントな業績(実績)
総説、原著論文を問わない。筆頭著者、共著を問わない。つまり共同研究をうまくやってコンスタントに論文が出ればいい。相互に論文に名前が載るような契約をしておけばいい。その契約を結ぶには、この実験系はXが必ずやるという専門が必要だ。そして最適で効率的なパートナーシップを結ぶことだ。
今年の自分は、最低でも年間2報が目標。低めに設定している。これは年齢、実績、パートナーシップに依存している。できれば筆頭著者として年間一報。これから書く力を強くして、総説を書いたり、ポジションを得て、予算を得て、もっと出したいところだ。
2.専門(Speciality, Profession)
A. 専門とは、特定の分野に詳しいことをいう。総説が書ければ「専門」と言っていい。総説を出していれば「お詳しいですね。専門家には、おカネをあげましょう。何かやってくれるでしょう。」となる。だったらスポンサーからおカネを得ようと思ったら「総説」が必要だ。
B. もう一つ、現代の生命科学においては「実験系」や「情報処理」も専門になる。この実験系においては、この人に頼めばやってくれる、Figureができる、研究における問題が解決できるといったものだ。それも専門になる。
C. 情報処理とはBioinformaticsのことだ。High throughput な機器や実験系が増えてきたから、それを整理してFigureにできるBioinformaticianは、専門家である。
Aの専門家は学問分野の専門家、BとCの分野は方法や技術を基盤とする専門家ということになる。
紳士SはタイプAで記述が専門であり、私はAB型である。今共同で総説を書いている。また過去ボスであるチンギスハンからは解析方法についての執筆依頼がきた。私をBの実験系ベースの専門家として扱っている。紳士Sもチンギスハンも老練PIなので私はBの立場だ。いつまでBの立場なのか、いつAの立場になるのか分からない。
3.予備データ
予備データなんていくらでもある。文献から選んでもいい、データベースから抽出してもいい。それに仮説に合わないからといって放置してあるデータや、論文のFigureとして採用されずに Supplemental dataとしたデータだって予備データとして使える。
重要なのは、「今から◯年間、これを研究するんだという意志」である。その意志さえあれば、総説も計画も書ける。予備データも集まる。
4.人
自分の研究チーム(ラボ)をもっていれば話が早い。大きなチームには巨額の予算が下りる。
NYヤンキースの年間予算は、日本の地方球団の年間予算よりも高い。同じヤンキースでもジーターやAのロッドのような選手もいれば、イチローもいれば、AAAにも多くの選手がいる。俺はAAAではないのか?? 這い上がれるのか? そこはよく考えないといけない。アーセナルやレアル・マドリーの予算は、アルビレックス新潟レディースの予算より高い。しかしレアルでもクリスチャーノ・ロナウドのようなスーパースターもいれば、レギュラーでない選手もいるだろうし、育成選手もいるだろう。外国人選手もいるだろう。そこのところは考えないといけない。
これは結局は、人と人の話だ。2人の人間が互いを尊重して認め合い協力できるかの話だ。2人でできなくても3人ならうまくいくケースもある。
NYヤンキースの年間予算は、日本の地方球団の年間予算よりも高い。同じヤンキースでもジーターやAのロッドのような選手もいれば、イチローもいれば、AAAにも多くの選手がいる。俺はAAAではないのか?? 這い上がれるのか? そこはよく考えないといけない。アーセナルやレアル・マドリーの予算は、アルビレックス新潟レディースの予算より高い。しかしレアルでもクリスチャーノ・ロナウドのようなスーパースターもいれば、レギュラーでない選手もいるだろうし、育成選手もいるだろう。外国人選手もいるだろう。そこのところは考えないといけない。
これは結局は、人と人の話だ。2人の人間が互いを尊重して認め合い協力できるかの話だ。2人でできなくても3人ならうまくいくケースもある。
まずは相手の専門を認めて尊重することだ。同時に「自分の専門」を明確に示せれば、共同研究もうまくいくだろう。
この辺は、様々なビジネスモデルをみてみたほうがいい。実験屋であれば、何でも屋なのか、コンサルタントなのか、専門家なのか。学者であれば、どういう専門分野なのか。総説や原著論文に現れるから、Pubmedで検索すれば分かる話であり、またGoogle検索で分かる場合もある。
例えば私の過去の実績は、Pubmedや機関のStaffのページが示している。しかしそれでは何か足りない。全て過去のものなのだ。未来は無理としても現在進行形がない。専門が近ければ、論文のタイトルをみただけで、大体理解されるだろう。しかし専門外の人(生命科学の分野外の人や、自分と専門の異なる専門家、潜在的なライバルや共同研究者)に自分の専門が伝わるだろうか。
その意味では、ウェブサイトが効果的だ。研究とは絶えず進展するものなので、ブログにサイトをぶら下げるのが現代的だろう。
ウェブサイトのコンテンツを考えてみよう。
・ 論文がPublishされたときの「ニュース」
アクティビティを示すものであり、年に2回はないと寂しい。スポンサーに活動実績を示し、次におカネを得るために一番重要。
・ 過去の業績・「実績」(Publications, Award, Grant)
履歴書の業績をコピペすればいい。またPubmedやGoogle scholarや所属機関の自分のサイトのコピペやリンクでもいい
・ 過去の業績からのまとめ(図や表に解説をつけたもの)
結論が得られたものを図や表で示すといい。これはブログの記事にしてもいい。過去の論文やスライドからの抜粋でもいい。過去のプレゼンのスライドの一部を公開してもいいだろう。プレゼンをYoutubeなどの動画で配信してもいいだろう。
また新しいモデルを提唱してもいい。その場合、迅速に総説や原著論文にすべきだ。
これらは全てブログ記事でもいい。
・リンク・バナー(スポンサー、広告、パートナーシップ)
過去の業績、実績は、過去のスポンサーつまり政府や財団から得た予算やお世話になった研究者(PI) のお陰であり、現在もその関係が続いていることも多い。これは社会において協力して成果を出した実績でもある。だから何らかの形で過去のスポンサーや共同研究者の名前も出しておく。
上原浩治のブログにはジャイアンツのバナーが貼ってある。
・日本語でやるか英語でやるか
お分かりの通り私は日本語のほうがやりやすい。論文にするときにはどのみち英語だ。しかし考えたり、整理したり、日本語同士で情報交換したりには当然日本語がむいている。これまで通り、日本語に専門用語や英語を混ぜた文章になるだろう。部分的に、時には英語のみのエントリーやページも出すことになる。その最たるものが原著論文やPublication listである。しかし英語論文には簡単な日本語解説を発表したい。誰かがとりあげて紹介してくれればそのほうがよいのであるが。
英語での創作(論文作成)やコミュニケーション、上達に専念するために時には日本語を封印することも必要だ。しかし日本語でのタイピングと日本語での思考や会話も続けなければ衰えてしまう。
5.設備
過去にいくつかの機関に在籍した。機器を使うのが得意な私にとって設備はチョ~重要だ。最初に在籍した研究室ではPIがカネをとるのがうまくて、機器設備が充実していた。しかし2つ目に在籍した組織では、PIにカネも知識も意欲もアイデアもなかったから、機関で共有の機器を使うしかなくそのアクセスも悪かった。
今在籍している組織ではPIはカネはとるが、機器にカネを使わない。機関が一流なので機器は共用のものが充実している。カネを払えば、共用機器はいつでも使える。
その機器を使いこなせる能力のある専門家(ヒト)もその辺を歩いている。その辺をあるいている能力のある専門家(ヒト)を上手にナンパしてパートナーシップを結ぶのが一番いい。これまでそうやってきたし、紳士Sもそうやっている。やっぱりヒトなのだ。
スポンサーは、成果が挙がる(論文が出る)見込みがあるかどうかを評定する。大発見するかどうかなど期待しない。それは偶然であり確率が低いから。コンスタントに論文が出るかどうかである。
そのためには機器があってそれを動かす専門家が申請書類にあるかどうかなので、一流組織に属してパートナーシップを結ぶことはチョ~重要だ。一流組織とはどういうものかというと、日本だと東大、京大、阪大、それから旧帝大。それに併設の研究所。私立なら慶応。それから理研。それくらい。
アメリカだと、西海岸ではUCLA, UCSF, UCBなどのUCの中でも上の方やSandiegoやSalk ,Scripsなどの研究所。MIT, Harvard, Princeton, Yaleなどの東海岸。NIH関係の政府機関。
真ん中へんだと、スーパーなPIに小判鮫のようにひっついてないとしんどいだろうな。魚とか日本食も少ないだろうし。家賃は安く、自然があって空気はキレイだろうけど。ヒト、カネ、モノはやっぱ都会に集まるから。
一流か、1.5流くらいの組織に属さないと設備で差がついてしまう。出張したり遠隔の共同研究者頼みというのは辛い。
そういった一流組織や一流PIのグループに入るのは競争率が高いので、コネを使うしか無い。やっぱりヒトだ。最大限アピールし続けて、ヒトを頼って新しい組織に入っていくしか無さそうだ。
一流組織にカネで引き抜かれるのが理想ですな。
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