状況: 彼の背後には奥さんがいる。Sは適当な人間なので、近くにいる奥さんに相談して受け売りするだけだ。自分の研究分野のことしかわからないS自身には、研究者の交渉や給与、マネジメントについて知識も判断力もない。奥さんは、アメリカ中西部出身の典型的アメリカ人だが、金融系、銀行系の管理職のため、金に厳しく差別もあるんじゃね? しかし、研究者社会の実情についてあの奥さんは無知のはずだ。こういってやろう
1 まず奥さんの入れ知恵を鵜呑みにしてはいけない(これは指摘)
「あなたが言っていることは奥さんの入れ知恵でしょ。奥さんは、金融や銀行には詳しいけど、研究者ではないでしょ。だから言っていることのほとんどが間違いですよ。気づきませんか?」
前回言われたことと、それへの反論
- 君は家族と高級住宅街に住んでいるから、金はあるんじゃないか? あほか! あれは学区のために住んでるんだ。あそこに住んだらレベルの高い公立学校の授業料が無料だから、高い家賃は子供の学校に行かせるために住んでいる。あんたの子どもたちもそうだっただろ!! あそこにすまなければ、犯罪の多いエリアに住んだり、教育レベルが落ちるんだよ! ふつーあそこに済むだろ、特に研究者で教育のこと考えたら。しかも、こいつはこういった。私たちは、田舎暮らしで家賃の安いところに住んでいる!!あほか!!! あんたら引退近い60歳とか40歳で、子供もおらんやろ! 全然状況が違うわ! こんなもん働く気が起こらん!!!!!
こういってやろう
2 住所と給与について(これは指摘、あいての間違いを指摘)
「前回、B市に住んでいることを、給料を上げない理由として上げましたね。しかもあなた方の住所と比較しましたね。それは、大きく間違っています。
我々はB市に住むのは、子供の学校と治安のためです。B市に住むことによって比較的高い家賃を払えば、レベルの高い公立学校での教育を無料で受けられます。だから研究者や医者はみなB市に住むのです。これは給料とは関係のない話です。
またあなたたち夫婦は子供の学校の心配をしなくていい。現にあなたが子供を学校に通わせていたときには、B市に家を買ってまで住んでいたではないですか?
つまり、子供の学校のためにB市に住むのは当然で、子供がいなくてH市に住むのも当然。私の給与に関して、私の住所の話を持ち出すことも、あなたたちの住所と比較することも、2重に間違えている。」
結局、あんたもあんたの元妻もおいらのかみさんの職を用意できなかったから、家族は帰国することになりました。他のラボ見てみ。ポスドクできたやつの奥さんをポスドクで雇ってはるで。
「ポスドクの奥さんがポスドクで雇われるのは普通によくあることだよ。
しかも、外国人で薄給だったら、ボスが奥さんのポストも用意する、そんな例をたくさん聞いたよ。しかも日本人は優秀で頭がよく手先が器用で、勤勉で真面目だからねえ
けどもあなたたちはそれをしなかったから、大事な戦力を失ったんだよ。
いいんですか、無能な人とか嘘つきだけラボに残りますよ。」
- 自分でグラントをあてたら、昇給も考えてもいい! あてました! こないだの秋に! ハイ、昇給!
A グラントと給与について(これも一番大事)
「前回の給与交渉の席で、自分でグラントを獲得したら、昇給するとあなたは言いました。Jグラントを獲得したので、昇給してください。
あれはあなたの助けがあり、獲得できたグラントです。ありがとうございました。」
- お金がない。 あほか、どんだけあんたの部下が無駄遣いしてきたとおもてるんや! 使いもせん同じ試薬を何度も買ってからに! TPとYZだよ。 それからAMは、ラボに残っている高級な抗体や試薬を私物化してやがるよ!! 俺が使おうと思ってもないねん。 それからYB、おれが整理した抗体や試薬を盗んで取り込んでやがるよ!
- おれは試薬や抗体を整理して、BLのような若手の研究のお膳立てをしてんねん! そのような若手の指導についても評価しなさい!! あれはあんたのアイデアちゃうやろ、俺のアイデアや!!!
B ラボマネージメント、倹約について(これ意外と一番大事か)
「前回の給与交渉の席で、グラントのお金が足りないことを、私の給料を上げない理由としてあげました。
あなたはグラントを取得する努力し、実際コンスタントにグラントを取得しています。
しかし、ラボのお金の倹約は私が行っています。
ラボでは皆浪費しています。
Aがラボの古い試薬を私物化して隠し持っているため、他の人が再発注しないといけません。
Hハ、私が整理した試薬と抗体を、盗んで自分の場所に隠しています。
YやTがどんな浪費をしたか覚えてますか?
まったくひどい。
私は、ラボの古くても利用価値のある試薬を整理整頓して、新人が研究しやすい環境を整えています。Bのための試薬、プロトコル、研究のデザインは私がしてきたのはご存知のとおりです。
それどころか、AはPCRすらできないので、TためのPCR関係の試薬は私が用意しています。
このように、私はラボの試薬をフェアに管理している。これはラボの運営のために大変重要なことです。このようなラボの運営についての貢献も給与に反映されるべきです。」
- そもそもおれは、今の2倍の給料もらってたんや。ポジションも准教授クラス。あんたと同じや。あんた実験のことわからんやろ。物語書いとるだけやないか! うそっぱち。科学的信ぴょう性とかどうなん? そこって全部オレが検証しとるんやろ。ケティの論文みてみ! データの水増しとか、うそのデータを発表しそうになった? あれそのまま発表した? そこを俺が指摘して、まともな道にもどしてるんやろ? あんたな、論文通ったらそれでええんか? 金がとれたらそれでええんか? 不正やってますって、世間にバラすで。 NIHに通告するで!
- ジェンりんとの共同研究はどうなん? あんたは頑張ってディスカッションして、話し相手になって、大変な人の研究をよく誘導してると思うよ。けどな、肝心なところで俺の助け必要やろ。研究まとまらんやないか。どうやってまとめたらいいか、方法論をあんたら知らんやろ。だから、研究が収束しよらん。そこをおいらが大変リーズナブルな方法を考え出して、すごいデータをもってくるから、あんたらの論文がまとまるんや。それ何度も経験したやろ。はっきりいうて、他のメンバーやと実験の方法とか精度が悪いから、まともなデータ出ませんよ!
C 自分の成果と強みについて(これ一番大事)
「客観的にみて、あなたは、論文とグラントのロジックをうまくやっていると思いますよ。しかし、実験については、新しい実験系も古い実験系も私ほど詳しい人はいないでしょ。変えが効かない。
Aなどは、どれも浅い知識だし、いい加減ですよ。たんに話を合わせて論文を書いているだけだ。
ケティの論文、ジェンりんの論文でアクセプトされたもの、進行中のものでそれぞれ何が起こっているか正確に把握していますか?
両方とも、あなた方のロジックと技術では行き詰まり、私のところに依頼したんでしょ。
私はテクニックがあるだけでなく、科学者だから、その研究において、必要なこと、どうすれば、論文を結論付けられるかを考えて、材料と方法を用意して、決定的なデータを出した。それによって研究を結論づけて完結することができた。
今もそれをやっている。
あまり薄給のままだと、モチベーションが低下し、研究の質やスピードが落ちますよ。みなにとってメリットがない。
そもそも私は日本で准教授クラスで、今の2倍の給料をもらっていたんだし。
成果をあげたら、給料に反映させるべきですよ。それは上司のマネージメントの仕事です。
そこを倹約すべきではありません。倹約は、実験においてやればいいんです。」
反論してきたら、全部、相手のせいとか、誰かのせいにしてやろう。決して自分のせいにしてはいけない。
昇給するまでストライキしてもいい。イギリスではストライキは当たり前。
しかし、僕という仲間を失うと、どうなるか考えたほうがいいよ本当に。
おまえなんて、すごく小さい専門分野で仲間をつくって、嘘ついて生き延びているだけだろ
とまあ、ひどいことも書いたが、あんまひどいのは、第3段階くらいにしまっておいて、第一段階、第2段階くらいのネタで交渉せなあかんね。
あとstuartの性格からして、理屈でくるだろ。時間を与えたら、理屈をよういしてくる。その理屈が成り立たないことを示せばいい。わざと彼が理屈(ストーリー)を組むように、しむけてもいい。こちらも理屈で返すのもいい。
あと、いつも失敗するのが、こちらのマイナス面を強調してしまうってこと。こちらのマイナス面が出ないような作戦を考えておく(ディフェンス)を第一にして、その上で、チャンスがあったら得点するというサッカー方式でいこう。